NBAドラフトとは?仕組みと流れをわかりやすく解説

NBAドラフトとは、大学やその他のリーグでプレーしている選手を、新人選手として各チームが指名する制度です。指名順は成績下位チームに有利なロッタリー(抽選)で一部が決まり、残りは前シーズンの成績の逆順で決まります。毎年6月に開催され、この年に指名された選手たちがルーキー契約を結んでNBA入りします。

「なぜ最下位に近いチームほど良い選手を獲得しやすいのか」「指名順はどうやって決まるのか」。この記事では、ドラフトの出場資格から、ロッタリーの抽選方式、指名巡数の歴史まで、ドラフトの仕組みを順番に整理します。あわせて、抽選制度がどのような経緯で今の形に落ち着いたのかも見ていきます。

目次

NBAドラフトとは?30秒でわかる要点

まず押さえておきたいポイントは次の5つです。

  • NBAドラフトは新人選手を各チームが指名する制度。毎年6月に開催
  • 出場資格はその年に19歳以上になること。米国内高校卒業者はさらに卒業から1年経過が必要
  • 指名順のうち上位4位はロッタリー(抽選)で決定。5位以降は前シーズン成績の逆順
  • 現在は2巡制(1巡目・2巡目)。1989年にNBA選手会との合意で現行の形になった
  • ロッタリー導入の目的はタンキング(意図的な負け)対策。1985年に導入された

指名順が下位チームに有利な仕組みは、負けたチームに強い選手を優先的に回すことで、リーグ全体の戦力バランスを保つための設計です。ただし、この設計そのものが「わざと負けた方が得」という別の問題を生みやすく、ロッタリーの確率設計はその副作用を抑えるための試行錯誤の産物でもあります。

出場資格:ドラフトに参加できる選手とは

NBAドラフトに参加するには、その年の暦年中に19歳以上になることが条件です。さらに、アメリカの高校でバスケットボールの資格を終えた選手は、高校卒業から少なくとも1年が経過している必要があります。海外出身の選手(international player)にはこの「卒業から1年」の条件は適用されません。

この年齢制限が導入されたのは2005年です。それ以前は、高校卒業と同時にNBA入りする選手も一定数存在しました。実際、歴代で45人の選手が高校から直接NBAにドラフトされており、その多くは1990年代後半から2000年代前半に集中しています。2005年の年齢制限導入により、この「高校生ドラフト」は事実上できなくなりました。

アーリーエントリー:大学生選手の宣言と撤回

大学に在籍したまま、卒業を待たずにドラフトに参加することをアーリーエントリーと呼びます。ただし、いったんドラフトを宣言しても、一定の条件を満たせば大学の出場資格(NCAA資格)を保持したまま撤回できる仕組みがあります。

2009年から2015年までは、4月のNBA合意期限の前日までに撤回すればNCAA資格を保持できました。2016年以降はルールが変わり、ドラフト宣言後もNBAドラフトコンバイン(新人選手の合同トライアウト)に複数回参加でき、5月中旬のコンバイン終了から10日以内に撤回すればNCAA資格を保持できるようになっています。自分の市場価値をコンバインで確かめてから、大学に戻るかプロ入りするかを判断できる仕組みです。

指名順はどう決まるか:ドラフトロッタリー

NBAドラフトの指名順を決める最大の特徴が、ドラフトロッタリー(抽選)です。ロッタリーの対象になるのは、前シーズンにプレーオフ進出を逃した下位14チームです。

抽選には、1から14までの番号が付いたピンポン球を使う抽選機が使われ、14チームに1,000通りの4桁の組み合わせが割り当てられます。2018年までは上位3位までがこの抽選で決まる方式でしたが、2019年以降は上位4位まで抽選対象が拡大されました。

確率の設計も2019年に変わっています。2018年までは最下位チームが250通り、2番目のチームが199通り、3番目のチームが156通りというように、成績が悪いほど確率が高くなる差の大きい設計でした。2019年以降は、成績最下位から3チームが同率で140通りずつ(1,000分の140、約14.0%)の当選確率を持つ形に変わり、最下位争いをしていた3チームの間で極端な有利不利がつかないよう調整されています。4番目に悪いチームは125通りで、以降は成績順に確率が下がっていきます。上位4位までが決まったあとの5位以降は、前シーズンの成績の逆順で機械的に決まります。

抽選は例年5月の第3〜4週に行われ、ESPNの生放送の直前に、NBA関係者や参加チームの代表、監査法人アーンスト・アンド・ヤングの立会いのもとで実施されます。放送では最初に下位からの指名順が発表され、最後に1位指名権が明かされる演出が恒例になっています。

なぜロッタリーが導入されたのか:タンキング対策としての抽選制

ロッタリー導入前の指名順の決め方は、もっと単純でした。各ディビジョン(1971年以降は各カンファレンス)の最下位チーム同士がコイントスを行い、勝ったチームが1位指名権を獲得する方式です。

この方式には大きな欠陥がありました。コイントスに参加する資格を得るために、シーズン終盤にわざと負けようとするチームが出てくるのではないか、という疑惑が常について回ったのです。NBAは1985年、この「タンキング」疑惑に対応するため、抽選(ロッタリー)方式を導入しました。単純なコイントスではなく確率に幅を持たせることで、負ければ負けるほど得をする構図をやわらげる狙いがありました。

指名巡数の変遷:かつては21巡もあった

現在のNBAドラフトは2巡制(1巡目・2巡目、合計60人前後)ですが、この形になったのは1989年からです。それ以前の変遷を振り返ると、ドラフトという制度の性格の変化がよくわかります。

初期のドラフトは、指名したい候補選手がいなくなるまで延々と指名を続ける方式でした。1960年と1968年のドラフトは、なんと21巡まで実施されています。その後1974年には10巡で落ち着き(1977年はABAとの統合の影響で8巡のみ)、1985年には7巡に短縮されました。そして1989年、NBA選手会(NBPA)との合意により、現行の2巡制に短縮されます。この変更によって、指名から漏れた選手も各チームのトライアウトに参加してロースター入りを目指せるようになりました。

もうひとつ、現在は廃止された制度に地域指名権(territorial pick)があります。1956年から1965年まで存在したこの制度は、チームが1巡目の指名権を放棄する代わりに、地元出身の有力選手を優先的に指名できるというものでした。地元選手を獲得することでファンの関心を集める狙いがあったとされています。1966年にこの制度は廃止され、1位指名権はコイントスで決める方式に切り替わりました。この1966年のドラフトが、現在につながる「近代的なNBAドラフト」の始まりとされています。

改革の紆余曲折:2014年の否決と「不正疑惑」

現行の確率設計(2019年以降、上位3チームが同率14%)にたどり着くまでには、一度の否決を経ています。2014年、NBAの理事会(Board of Governors)は、最下位争いをするチームの確率差を縮める改革案を採決にかけました。当時は最下位チームの1位指名権獲得確率が25%もあり、この確率を4チームともほぼ11%に均す案でした。採決は17対13で賛成多数だったものの、変更に必要な23票には届かず、この時点では否決されています。

改革が足踏みしている間、ロッタリーの公正性そのものを疑わせる出来事も起きました。2016年には、元NBA選手のディケンベ・ムトンボが、抽選が行われる数時間前にフィラデルフィア・76ersの1位指名権獲得を祝うツイートを投稿し、話題になりました。結果として76ersは実際に1位指名権を獲得し、しかもこの年は抽選前の順位と抽選後の順位がまったく同じになるという、ロッタリー史上初めての出来事も重なりました。翌年にはレイカーズの幹部だったマジック・ジョンソンが、ヘッドコーチに対して事前にレイカーズの指名権獲得を請け合っていたとされる発言も報じられ、抽選プロセスへの疑念に拍車をかけました。

こうした経緯もあり、2019年からの確率改定は「最下位を目指す動機(タンキング)を薄める」という当初の2014年案の狙いを、5年越しに実現させたものだといえます。

よくある質問(FAQ)

Q1. NBAドラフトに参加できる年齢は何歳からですか?

その年の暦年中に19歳以上であることが条件です。アメリカの高校出身選手は、さらに高校卒業から1年以上経過している必要があります。海外出身選手にはこの1年条件は適用されません。

Q2. ドラフトの指名順はすべて抽選で決まりますか?

いいえ。抽選(ロッタリー)で決まるのは上位4位までです。5位以降は、前シーズンの成績が悪いチームから順に、機械的に指名順が割り当てられます。

Q3. ロッタリーの当選確率はどのチームも同じですか?

いいえ。2019年以降のルールでは、成績最下位から3チームが同率で約14.0%の確率を持ちますが、4番目以降のチームは成績順に確率が下がっていきます。

Q4. なぜロッタリー方式が導入されたのですか?

導入前はコイントスで1位指名権を決めていたため、そのコイントスに参加する資格を得ようとシーズン終盤にわざと負けるチームが出るのではないかという疑惑がありました。この「タンキング」疑惑への対策として、1985年に確率抽選の方式が導入されました。

Q5. ドラフトは何巡まで行われますか?

現在は2巡制で、合計60人前後が指名されます。1989年にNBA選手会との合意でこの形になりました。かつては指名候補がいなくなるまで指名を続ける方式で、1960年と1968年は21巡まで行われた記録があります。

Q6. ロッタリーの結果が不正だという疑惑は本当にあったのですか?

具体的な不正が証明されたわけではありませんが、疑念を招く出来事は起きています。2016年には抽選前に76ers獲得を予告するようなツイートが出回り、実際に76ersが1位指名権を獲得しました。同じ年は抽選前後で順位がまったく変わらないという史上初のケースにもなり、翌年もレイカーズをめぐる同様の噂が報じられました。こうした一連の出来事が、2019年の確率改定を後押しした側面もあります。

まとめ:ドラフトは「弱いチームほど有利」を制度化した仕組み

最後に、この記事のポイントを振り返ります。

  • NBAドラフトは新人選手を各チームが指名する制度。毎年6月開催
  • 出場資格はその年に19歳以上。米国内高校卒業者は卒業から1年経過が必要
  • 指名順の上位4位はロッタリー(抽選)、5位以降は前シーズン成績の逆順
  • ロッタリーはタンキング対策として1985年に導入。2019年に確率の設計が変更された
  • 現在は2巡制。1989年にNBA選手会との合意で現行の形になった

オフシーズンのドラフト報道で「〇位チームの当選確率」「ロッタリー対象チーム」という表現を見かけたら、この記事で整理した仕組みを思い出してみてください。指名順がどう決まるのかがわかると、ドラフト前夜の盛り上がりの意味も変わって見えてきます。弱いチームほど有利という一見単純な仕組みの裏に、タンキング対策の攻防と改革の紆余曲折が積み重なっていることを知っていると、毎年5月の抽選番組の見方も少し変わるはずです。

参考

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