タンキング

読み方 たんきんぐ

タンキング(Tanking)とは、NBAのドラフト制度を活用した長期戦略で、翌シーズン以降のドラフトで高い指名順位を獲得するために、意図的に試合での勝利を後回しにする行為・方針のことです。「タンク(tank)」は英語で「自ら撃沈する」という意味を持ちます。

なぜタンキングが生まれるのか

NBAドラフトロッタリー制度は、前シーズンの勝率が低いチームほど上位指名を引き当てやすい仕組みになっています。歴代のドラフト1位指名選手にはレブロン・ジェームズ、ティム・ダンカン、ザイオン・ウィリアムソン、ビクター・ウェンバンヤマなど、キャリアを変えるスーパースターが並びます。「今すぐ優勝争いができない戦力なら、数年後の核を手に入れる方が合理的」という判断からタンキングは選択されます。

タンキングの具体的な手法

チームが実際にタンキングを行うとき、表向きは「リビルディング再建)」という言葉が使われます。具体的には以下のような動きが見られます。

  • 高額サラリーのベテラン選手を放出し、若手や将来の指名権を獲得するトレード
  • 有力選手のトレードやバイアウトを意図的に早めてFA市場へ解放
  • 若手・未完成選手に出場時間を与え、勝率よりも育成を優先するロスター編成

歴史的に有名なタンキング事例

タンキング戦略として最も有名なのが、フィラデルフィア・76ersが2013〜2017年頃に行った「Trust the Process(プロセスを信じろ)」です。GM・サム・ヒンキーのもとで主力を次々放出し、4シーズン連続で勝率最低クラスを維持しながらドラフト指名権を集め続けました。その結果、ジョエル・エンビード(全体3位、2014年)とベン・シモンズ(全体1位、2016年)という2人のスターを獲得し、東の優勝候補に返り咲きました。

ただしタンキングが必ずしも成功するわけではありません。高い指名権を手に入れても「外れ指名」になる可能性があり、数年間ファンに我慢を強いて失敗するリスクも伴います。

NBAのタンキング対策:ドラフトロッタリー改革

あからさまなタンキングが問題視されるようになったため、NBAは2019年にドラフトロッタリー制度を改定しました。改定前は最下位チームが最も高い確率で1位指名を引けましたが、改定後はワースト3チームが1位指名を引く確率を均等化(各14%)し、「極端に負けるよりも中程度に負けた方が確率的に不利」という状況を作りました。これによりあからさまなタンキングのインセンティブを下げる効果があるとされています。

タンキングに対する批判と賛否

タンキングに対しては「スポーツの本質である『勝利を目指す姿勢』を損なう」という批判があります。一方でチームの長期的な視点での再建戦略として「やむをえない選択」と理解する意見もあり、ファンや専門家の間でも評価が分かれます。「今のチームで無理をして中途半端な成績を繰り返すより、一度底をついて上位指名で建て直す方が長期的に健全だ」という考え方が支持されることも少なくありません。そのためNBAでは「意図的に負けているチーム」への評判は複雑で、地元ファンが忍耐を求められる辛い時期でもあります。

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