NBAのマックス契約とは、リーグの労使協定(CBA)が定める個人年俸の上限額いっぱいで結ぶ契約のことです。上限はサラリーキャップの25%・30%・35%のいずれかで、選手の経験年数によって決まります。2025-26シーズンのサラリーキャップは1億5,464万7,000ドル(約232億円、1ドル=150円換算)なので、経験10年以上の選手なら初年度だけで最大約5,413万ドル(約81億円)を受け取れる計算です。
この記事では、マックス契約の前提となるサラリーキャップの全体像から、経験年数別の上限額、バード権による優遇、そして「スーパーマックス」と呼ばれる特例まで、NBA公式発表の数値をもとに順番に解説します。
マックス契約とは?30秒でわかる要点
マックス契約について最低限おさえておきたいのは次の5点です。
- マックス契約=CBAが定める個人年俸の上限額での契約。「マックス(max)」は maximum salary(最大年俸)の略
- 上限額は固定の金額ではなく、その年のサラリーキャップに対する割合で決まる
- 割合は経験年数で3段階。0〜6年は25%、7〜9年は30%、10年以上は35%
- 自チームと再契約する場合は最長5年・年8%昇給、他チームへ移籍する場合は最長4年・年5%昇給。残留のほうが条件面で優遇される
- 一定の受賞歴がある選手は、本来の割合を超えて35%まで受け取れるスーパーマックス(指定ベテラン選手契約)という特例がある
つまり「マックス契約がいくらか」は毎年変わります。サラリーキャップが上がれば、マックス契約の金額も自動的に上がる仕組みです。
サラリーキャップの全体像
マックス契約を理解するには、まずサラリーキャップの仕組みをおさえる必要があります。サラリーキャップとは、各チームが選手に支払える年俸総額の上限のことです。リーグの前年度収入(バスケットボール関連収入=BRI)の一定割合をもとに毎年算出されるため、リーグが儲かるほどキャップも上がります。
NBAの公式発表によると、2025-26シーズンの主要な金額は次のとおりですF。
| 項目 | 2025-26シーズンの金額 |
|---|---|
| サラリーキャップ | 1億5,464万7,000ドル |
| 贅沢税ライン(タックスレベル) | 1億8,789万5,000ドル |
| チーム最低総年俸 | 1億3,918万2,000ドル |
| 第1エプロン | 1億9,594万5,000ドル |
| 第2エプロン | 2億782万4,000ドル |
注目したいのは、NBAのキャップが「ソフトキャップ」である点です。NFLのような絶対に超えられないハードキャップと違い、NBAにはキャップを超えて契約できる例外規定が多数あります。その代表が後述するバード権です。ただし超過額が贅沢税ラインを上回ると課徴金が発生し、さらに第1・第2エプロンという基準を超えると補強手段が厳しく制限されます。「超えられるが、超えるほど痛い」という段階的なブレーキが効いているわけです。
個人のマックス契約は、この全体の上限の内側にある「1人あたりの上限」です。チーム総額の上限とは別に、1人の選手に支払える金額にもフタがある、という二重構造で成り立っています。
マックス契約の上限額は経験年数で決まる
個人年俸の上限は、NBAでのプレー経験年数によって3段階に分かれます。2025-26シーズンのサラリーキャップに当てはめると、初年度年俸の上限は次のようになります。
| 経験年数 | キャップに対する割合 | 2025-26の初年度上限額 | 円換算(1ドル=150円) |
|---|---|---|---|
| 0〜6年 | 25% | 約3,866万ドル | 約58億円 |
| 7〜9年 | 30% | 約4,639万ドル | 約70億円 |
| 10年以上 | 35% | 約5,413万ドル | 約81億円 |
※上限額はサラリーキャップ公式値(NBAが2025年6月30日に発表した2025-26シーズンの数値)からの算出です。キャップは毎年改定されるため、シーズンが変われば金額も変わります。
キャリアが長い選手ほど上限が高くなる設計で、若手の年俸が一気に跳ね上がるのを抑えつつ、実績あるベテランには相応の報酬を認める、という考え方が反映されています。
なお、これには例外が1つあります。前契約の105%までの金額なら、リーグの上限を超えていても契約できるというルールです。すでに高額契約を結んでいるベテランが、キャップの伸びが鈍い年に減俸を強いられないための救済措置といえます。
ちなみに、この記事で扱うのは年俸の「上限」ですが、CBAには経験年数別の「下限」(ミニマム契約)も定められています。上限と下限の間で、各選手の市場価値に応じた契約が結ばれるのがNBAの年俸体系です。
契約年数と昇給率:バード権がカギ
マックス契約の総額を左右するもう1つの要素が、契約年数と年次昇給率です。ここで重要になるのが「バード権(ラリー・バード例外)」と呼ばれる制度です。
バード権とは、自チームのフリーエージェント(FA)と再契約する場合に限り、サラリーキャップを超えてもマックス額まで契約できるという例外規定です。1980年代にボストン・セルティックスがラリー・バード(Larry Bird)と再契約するために認められたのが由来で、ウェイブやFA移籍を挟まずに3シーズン在籍すると資格が得られます。トレードされた場合は、バード権も移籍先のチームに引き継がれます。
このバード権の有無によって、提示できる契約条件に明確な差がつきます。
| 条件 | 自チームと再契約(バード権あり) | 他チームと契約 |
|---|---|---|
| 最長契約年数 | 5年 | 4年 |
| 年次昇給率 | 最大8% | 最大5% |
初年度の上限額は同じでも、「5年・8%昇給」と「4年・5%昇給」では契約総額に数千万ドル単位の差が生まれます。スター選手が移籍よりも残留を選びやすくなるように、制度そのものが「今いるチームに残るほうが得」という構造になっているのです。FA市場で「残留なら5年◯億ドル、移籍なら4年◯億ドルが上限」といった報道が出るのは、このルールが理由です。
スーパーマックスとは?(指定ベテラン選手契約)
近年のNBAニュースで頻繁に登場する「スーパーマックス」は、正式には指定ベテラン選手契約(デジグネイテッド・ベテラン・プレイヤー・エクステンション、DVPE)という制度です。2017年のCBAで導入されました。
通常なら経験7〜9年の選手の上限はキャップの30%ですが、スーパーマックスの資格を満たすと、本来より高い35%を初年度から受け取れます。2016年オフにケビン・デュラント(Kevin Durant)がサンダーからウォリアーズへ移籍したことをきっかけに、小規模市場のチームがスター選手を引き留めやすくするために作られた経緯から、「ケビン・デュラント・ルール」とも呼ばれます。
スーパーマックスの資格条件
対象となるのは、NBA8年目または9年目に入る選手で、次のいずれかを満たす場合です。
- 直前のシーズン、または過去3シーズン中2シーズンでオールNBAチームに選出
- 直前のシーズン、または過去3シーズン中2シーズンで最優秀守備選手賞(DPOY)を受賞
- 過去3シーズン以内にシーズンMVPを受賞
さらに重要な条件として、この契約を提示できるのはその選手をドラフト指名したチーム、またはルーキー契約中にトレードで獲得したチームだけです。つまりスーパーマックスは移籍先では絶対に手に入りません。「最高額が欲しければ今のチームに残る」という選択を迫る、残留インセンティブの最たるものです。契約は最長5年で、締結後1年間はトレードできないという制約も付いています。
ルーキー契約明けにも「30%特例」がある
似た仕組みとして、ルーキー契約を終えたばかりの若手向けの特例もあります。オールNBAチームに2回選出される、MVPを受賞するなどの基準を満たした若手は、本来の25%ではなくキャップの30%で契約を結べます。2011年のCBA導入時、当時のMVPデリック・ローズ(Derrick Rose)だけが対象だったことから「デリック・ローズ・ルール」と呼ばれる制度です。ルカ・ドンチッチ(Luka Dončić)が2021年オフにマーベリックスと結んだ5年2億700万ドルの延長契約が、この特例を使った代表例です。
実例で見るマックス契約
制度を実際の契約に当てはめると、金額のスケール感がつかめます。代表的なスーパーマックス契約を時系列で並べてみましょう。
| 選手 | チーム | 契約内容 | 締結時期 |
|---|---|---|---|
| ステフィン・カリー(Stephen Curry) | ウォリアーズ | 5年2億100万ドル | 2017年オフ |
| ヤニス・アデトクンボ(Giannis Antetokounmpo) | バックス | 5年2億2,800万ドル | 2020年オフ |
| ジェイレン・ブラウン(Jaylen Brown) | セルティックス | 5年最大3億400万ドル | 2023年オフ |
| ジェイソン・テイタム(Jayson Tatum) | セルティックス | 5年3億1,500万ドル | 2024年オフ |
| シェイ・ギルジャス・アレクサンダー(Shai Gilgeous-Alexander) | サンダー | 4年2億8,500万ドル | 2025年7月 |
史上初のスーパーマックスは、2017年にカリーがウォリアーズと結んだ5年2億100万ドルでした。それから10年足らずで、ブラウンの契約は締結時点でNBA史上最高額となる5年最大3億400万ドルに到達し、翌年にはチームメイトのテイタムが5年3億1,500万ドルでそれを上回りました。
そして2025年7月には、MVP受賞直後のギルジャス・アレクサンダーがサンダーと4年2億8,500万ドルの延長に合意します。総額ではテイタムに及ばないものの、年平均額(約7,100万ドル、約107億円)では締結時点で史上最高とされる契約です。サラリーキャップの上昇に連動して、マックス契約の金額も年々膨らみ続けていることがよくわかります。
なお「史上最高額」はあくまで締結時点の話で、キャップが上がれば数年で更新されるのが常です。ニュースで最高額の見出しを見たら、「今のキャップ基準での最高」と読み替えるのが正確です。
よくある質問(FAQ)
Q1. マックス契約の金額は毎年変わりますか?
変わります。上限額は「サラリーキャップの25%・30%・35%」という割合で定義されているため、キャップが上がればマックス契約の金額も上がります。キャップはリーグのバスケットボール関連収入(BRI)に連動して毎年改定されるので、放映権収入などが伸びれば上限も伸びる仕組みです。
Q2. マックス契約とスーパーマックスの違いは何ですか?
マックス契約は経験年数に応じた通常の上限(25%・30%・35%)での契約全般を指します。スーパーマックスはその特例で、オールNBA選出やMVP受賞などの条件を満たした8〜9年目の選手が、本来の30%を超えて35%を受け取れる制度です。しかも提示できるのはドラフト指名したチーム(またはルーキー契約中に獲得したチーム)だけに限られます。
Q3. なぜ移籍より残留のほうが契約条件で有利なのですか?
CBAが意図的にそう設計しているためです。自チームとの再契約はバード権により最長5年・年8%昇給が認められる一方、他チームとの契約は最長4年・年5%昇給が上限です。スター選手の流出を防ぎ、戦力の固定化と地域人気の維持を図る狙いがあります。
Q4. マックス契約を結べる選手は各チーム何人までですか?
マックス契約自体に人数制限はありません。チーム総額がサラリーキャップや贅沢税ライン、エプロンの制約に収まるかどうかが実質的な上限になります。実際、セルティックスのようにブラウンとテイタムという2つのスーパーマックスを抱えるチームも存在しますが、その分だけ贅沢税やロスター編成の負担は重くなります。
まとめ:マックス契約は「割合」で理解する
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- マックス契約とは、CBAが定める個人年俸の上限額での契約のこと
- 上限は金額ではなくサラリーキャップに対する割合で決まり、経験0〜6年は25%、7〜9年は30%、10年以上は35%
- 2025-26シーズンはキャップ1億5,464万7,000ドルに対し、初年度上限は約3,866万〜5,413万ドル
- 自チームとの再契約は5年・年8%昇給、移籍は4年・年5%昇給と、バード権のある残留が有利
- 受賞歴のある8〜9年目の選手は、スーパーマックスで35%まで受け取れる(提示できるのは元のチームだけ)
「マックス契約=固定の金額」ではなく「キャップの◯%」という割合で捉えるのが、契約ニュースを読み解くいちばんの近道です。「残留なら5年、移籍なら4年」「MVP受賞でスーパーマックス資格」といった報道の意味が、この記事の内容だけでほぼ説明できます。
参考
- NBA salary cap for 2025-26 season set at $154.647 million(NBA.com)
- NBA salary cap(Wikipedia英語版)
- Celtics’ Jayson Tatum agrees to 5-year, $315 million extension(NBA.com)
- Jaylen Brown agrees to supermax extension with Celtics(NBA.com)
- NBA on Prime — 月600円〜(主要試合・最安)
- NBA docomo — 週10〜15試合・日本語実況
- League Pass — 全試合(月3,190円〜)

コメント